カクレミノ2

「被害者」と同じように見える事象として”鬱”がある。

時に怠惰な人間の振る舞いによく似たそれは、
やはり怠惰な模倣者にとって格好の隠れ蓑となる。

昔、同僚が自殺した。
典型的な鬱で、薬とキャバクラに活力の全てを委ねていた彼の席の隣に座っているうちに色々なことがわかったし感じた。罰当たりなのを承知で言うと「ホンモノを見た」という感じ。そのうち彼の何かに自分はわずかながら引き込まれ続け、死を知ったときあの世に何か、ちょっとした何かを引き抜かれ持って行かれたような気がした。斎場でも悲しいというより怖くて彼に近づくことができなかった。怖くて少し泣いた。
それ以降「俺は鬱だから」という人間を何人か見た。なにも感じることはなかった。無神経にそういう隠れ蓑を使える人間が鬱なものか、と怒りを感じるだけだった。